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おとしぐれ ショーガ from the CROSS
月 日 は 百 代 の 過 客 に し て 、 行 き か う 年 も ま た 旅 人 な り
蛻
僕が嫌う人の数だけ 僕を嫌う人がいて
鞣した皮の様な夜に そっと首を絞められる
深く沈んだ海底から 光の漏れる水面へ
出した懸想文の宛名は ずっと前に死んだ僕
ここに居るのは ただの蛻 確かにあった熱の残骸
口を塞いで 静寂の中を 孤独に駆ける
鳥籠に居ながら 自由を知りたくて 羽ばたくように落ちて逝く
時代が過行く速さに負け 運命は損傷して
陥る先には甘い罠 脳は溶け流れていく
ここに居るのは ただの蛻 沢山あった夢の墓石
耳を塞いで 木霊の中を 孤独に駆ける
イカロスの妄想 ホメロスの影武者 刹那の隙に毒が咲く
鬣を失くした獅子 歌を失くした金糸雀
翼を失くした天馬が 夕間暮れの空に啼く …―― 怨
ここに居るのは ただの蛻 無数にあった明日の切れ端
あちらとこちら 黒い水際で 孤独に踊る
描いた未来図は 悉く敗れて 何にもできずに荒野で独り今日も惑う
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